こんにちわ。
山岳小説が好きな方は素通り厳禁!
トレッキングやハイキングが好きな男性・女性にも読んでもらいたい!
私が読んだ山岳小説の中でもピカイチに面白かった本を紹介していきたいと思います。
もう新幹線の東京ー新大阪間をこだまに乗ってもあっという間!
※ 作者・概要は前編でも載せていますが、このページからという人の為に書いています。
【還るべき場所】 / 笹本稜平 / 文春文庫
物語の舞台はカラコルム山脈にある世界第2位のK2とK3(=ブロード・ピーク)
過去を振り返る時のの内容はK2。主はブロード・ピークでの過酷な状況との戦いや人間模様を描いた作品です。
引用元:笹本稜平(2011年)『還るべき場所』文藝春秋 裏表紙より
世界第2の高峰、ヒマラヤのK2。
未踏ルートに挑んでいた翔平は登頂寸前の思わぬ事故でパートナーの聖美を失ってしまう。事故から4年、失意の日々を送っていた翔平は、アマチュア登山ツアーのガイドとして再びヒマラヤに向き合うことになる。パーティに次々起こる困難、交錯する参加者の思い。傑作山岳小説、待望の文庫化!
著者プロフィール:笹本 稜平(ささもと・りょうへい)
1951年千葉県生まれ。立教大学社会学部社会学科卒業。2000年、『ビッグブラザーを撃て!』にて作家デビュー。’01年には『時の渚』で第18回サントリーミステリー大賞・読者賞をダブルで受賞した。’03年の『太平洋の薔薇』で第6回大藪春彦賞を受賞。他の作品に『不正侵入』『極点飛行』『恋する組長』『マングースの尻尾』などがある。
物語は後半戦のブロード・ピークへ
ブロード・ピークに乗り込んだ翔平たち。他の国から来た同じ公募登山グループ。
みんなが安全に笑顔で登頂するためにしっかり準備をしてきたが…。
公募してきたアマチュア登山家たちを出来る限り安全に頂上まで連れて行くにはこんなにも大変なんだなぁと気付かされます。現地ガイドやリエゾンオフィサー、高所ポーターなどみんなの支えがなくては絶対に辿り着くことは不可能だと知ることが出来ます。
とても不気味なカラコラムの天気
それにしてもと翔平は思った。今年のカラコルムはどこか狂っている。これも地球温暖化の影響か。冬から春の大量の積雪と夏に入っての極端な好天の持続がひどく歪んだ状況を生み出している。それがなにか呪われたもののような気がしてきた。
引用元:笹本稜平(2011年)『還るべき場所』文藝春秋 pp255-256より
物語の行く末をこの地方特有な言い回しでうまく表現しています。『嵐の前の静けさ』ということわざにもある通り、これから変化していく展開で読者の期待をうまく煽っています。
普通に生活していればまず味わう事のない−50℃の世界や猛烈な強風、落石、雪崩。読んでいるだけで息が詰まる展開。ページをめくる手が止まりません!
人生は経験に勝るものは無し
このブログの【前編】でも書きましたが、この小説には私にとっても凄く響く格言や名言が出てきます。主要登場人物である神津邦正が特に素晴らしい言葉を連発します。
どの社会にも言える事ですが、苦労して得た物や教えは一生の宝物ですよね。経験に勝るものは無いと作中でも年配の神津は若い世代に語りかけます。ここもこの小説をオススメする理由なんです。たくさんの人生楽しくする為の考え方も出てきます。
自然は人間の敵じゃない。征服すべき対象でもない。我々に出来るのは、その内懐で謙虚に遊ばせてもらうことだけだ。
引用元:笹本稜平(2011年)『還るべき場所』文藝春秋 p.395より
絶望は戦いからの逃避だよ。あるいは魂の自殺行為だ。
引用元:笹本稜平(2011年)『還るべき場所』文藝春秋 p.503より
とても良い沁みる一言です。皆さんもこの小説の中にある格言・名言を探してみて下さい。
この作品に登場する人物、特に神津さんは理想の上司ランキングでもトップクラスだね。
まとめ:『それぞれの還るべき場所』
物語の終盤から最後にはそれぞれの気持ちが整理できて晴れていく模様が描かれています。
最も大切な聖美が遭難した真相に近づくことができた翔平の還るべき場所とは?
胸が熱くなり、頑張れ!という気持ちになる小説です。ぜひ手に取ってみて下さい。
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