初めて手に取った山岳小説がこれなら山岳小説にハマること間違いなし!
山岳小説の醍醐味は自然との向き合い方や極限状態での人の心。役に立つ考え方や自然に対する勉強にもなる事がたくさんあるんです。
そんな面白い山の読み物でも私が読んでかなり面白かった本を紹介していきたいと思います。
【大岩壁】 / 笹本稜平 / 文春文庫
物語の舞台はヒマラヤで「魔の山」と呼ばれるナンガ・パルバット。標高8,126mで世界第9位の高さの山です。
標高8000メートル峰が屹立するヒマラヤで〝魔の山〟と畏怖されるナンガ・パルバット。立原祐二は、前人未到の冬季登頂に失敗、友人の倉本を失った。5年後、立原は、兄の雪辱に燃える倉本晴彦と共に、再び〝魔の山〟と対峙する。ロシアのパーティの不穏な動き、牙を剝く過酷な天候……。頂きに立つのは誰か。
引用元:笹本稜平(2004年)『大岩壁』文春文庫 裏表紙より
著者プロフィール:笹本 稜平(ささもと・りょうへい)
1951年千葉県生まれ。立教大学社会学部社会学科卒業。2000年、『ビッグブラザーを撃て!』にて作家デビュー。’01年には『時の渚』で第18回サントリーミステリー大賞・読者賞をダブルで受賞した。’03年の『太平洋の薔薇』で第6回大藪春彦賞を受賞。他の作品に『不正侵入』『極点飛行』『恋する組長』『マングースの尻尾』などがある。
高い山に登る為には必ず必要な高度順応
この物語の内容のキーワードポイントは高度順応というもの。技術や体力が人並み以上にあったとしても高い山に登るには高山病対策は避けては通れない準備です。
この高所への強さという部分においての個人差に注目して読んでみて下さい。
世間一般の目には、8000m級と7000m級にはファーストクラスとビジネスクラスの違いがあるし、6000m級以下はエコノミークラスというイメージじゃないですか。
引用元:笹本稜平(2004年)『大岩壁』文春文庫 pp.25-26より
この引用部分はトップクライマーだけの認識だよね。
山の価値観は人それぞれだし。
この文章からするとエコノミークラスしか行った事ないよ(笑)
やはり未踏のルートに挑戦するっていうのは凄い事なんだよなぁ。
仕事でも最初に何かやる人は違うもんね。
6000mや7000m級の山と8000m峰の違いが個人だけでなく、パーティにも影響を与える!
夏のシーズンですら遭難などのリスクが非常に高いナンガ・パルバット。その中でも困難とされるルパール壁からの冬季登攀計画。読みながらも『何故?わざわざ』と思ってしまう挑戦です。
突然の申し出により遠征帯同
1本の電話連絡から亡くなった友人 倉本の弟が参加することに。この決断が後々のパーティに与える影響は吉か?凶か?
先ほども言いましたが、そもそもかつて「人喰い山」の異名をとり、現在も死亡率の高さでK2などと並ぶ山に行きたがる神経がヤバすぎですよね。
未踏のルートで頂上を目指すことに全てをかける
立原達を困らせても仲間が大きな怪我をしても倉本の弟は自分勝手に頂上を目指します。その怖いまでの執念は何故なのか?
仲間としてお互いザイルを組んだのに、死と隣り合わせのような場所での歪み合い。8000mのデス・ゾーンは人間の心や思考を狂わせるようです。
どういう選択が正しいのか?読んだら皆さんもイラッとする部分があると思います。間違いなくw
まとめ
ヒマラヤには行ったことがありません。ただ行った事がないのに目の前に極限の情景を想像出来るほど、緊迫感のある描写で書かれています。
もう読まずにはいられない一冊になっているはずです。
なんかどこかの山の頂上に行きたい気分になりました。(もちろん全然規模は違いますが…)
コメント